もうひとつのウドーフェス

立ち読みした『ストレンジ・デイズ』10月号掲載の小島智氏による「ウドー・ミュージック・フェスティバル」レポートが面白かった。
ネット上のレポートによってその世紀の大惨事ぶりが知れ渡った同フェスだが、SD誌の記事では閑散とした会場の寂寥にも、大物ミュージシャンの苦笑にも、中高年客のマナーの悪さにも、猫と戯れるほのぼのにも一切触れていない。その代わりにステージ上の音楽に焦点を絞り、贅沢な出演者を余裕をもって楽しむという、いい感じな「大人の夏フェス」としてのあるべき姿が描かれていたのだ。
これはネット情報によって脳裡に浮かべたウドーフェス像とはあまりにも違う。別に嘘は書いていないので捏造ではないが、それにしても「事実の隠蔽」「提灯記事」という批判を受けるような内容ではあるかもしれない。ただし、ネットによっていち早く「身も蓋もない実情」を知りえてしまう現状では、むしろ雑誌記事の担う「身や蓋」の部分が新鮮に感じられる。第一、同フェスでの演奏そのもの(のみ)に触れたレポートは小島原稿くらいしか目にしていないので、それだけでもネットと紙媒体は相補的でありうることの証明ではあろう。建て前というものはやはり必要だ(そういえば各誌の『ゲド戦記』評はライターが持てる技量を競い合っている感があって、ちょっと楽しい)。