跨線橋

手元に読みたい本がなくなって武蔵境の図書館へ。佐藤哲也『熱帯』(文藝春秋)、橋本治『蝶のゆくえ』(集英社)借り、いくつか雑誌を流し読む。
『東京人』最新号が鉄道特集。都電荒川線沿線や湾岸地区の車庫などの「名所」に混じって、三鷹電車庫の跨線橋が紹介されている。学生時代に近くのアパートに住んでいた。いつも日が落ちる頃に、跨線橋の上で練習しているらしいボンゴの音が、夕餉の匂いとともに流れてきたのを覚えている。記事によると晴れた日の夕方に武蔵境を臨むと、夕焼けを背に富士山の影が浮かび上がるのだとか。この界隈に長年暮らして跨線橋を何度も渡ったが、富士山など気に留めることさえなかった。さっそく当地に赴き橋の上から西を見渡してみるも、あいにくの曇り空で、かすかに赤みを帯びた灰色の雲がイトーヨーカ堂の傍らに横たわるばかり。富士山など影も形もない。街を分断し幾重にも鉄路が拡がり伸びる様は、それだけで鉄の人には一大スペクタクルなのだろうが。
武蔵境駅前の本屋で『SFが読みたい!2005年版』(早川書房)購入、エクセルシオールカフェでコーヒー啜りつつ読む。国内作品をほとんど読んでいないのは文庫が少ないからか。ちなみに借りた『熱帯』は6位に入っていた。幸いほぼ図書館で読める模様。全くSF出版に貢献しないことです。