棚からひとつかみ

棚からはみ出して積み上げてあるのだが。
犬上すくね『ういういdays』1巻(竹書房
「ういうい」と「days」の間にハートマークが入る題名通りに、高校生カップルのういういしい恋愛の日々を絶妙のヌルさで描く。作者は大変かもしれないが、犬上すくねにはこの温度加減が丁度良いと思うのは私だけか。こうした純情恋愛漫画が、例えばとよ田みのるラブロマ』のようにエキセントリックなキャラクターを投入しなくても成立するのは、鉄壁のヌルさをキープする4コマ誌という媒体の特性でもあるだろう。制服の裾から覗くペチコートのフリルが、微エロの極意に達していて見事だ。
おがきちかLandreaallランドリオール)』4巻(一賽社)
愛する女性を救うため龍と戦うという剣と魔法の世界から、主人公のハリポタ(?未読なんでよく判らん)学園生活へと移行。突然の路線変更のようで、これがまた面白い。大体今日びの漫画における「学園」なるもの、暴力とエロの供給源でしかなかったりするのだから、「社会の縮図」としての学園生活がまともに描かれているだけで賞賛に値する。登場する大人たちも実にまっとうだ。主人公を筆頭とした登場人物たちの倫理の「まっとうさ」こそ、私はおがきちかの美点だと思っている。作者のホームページから本作のサブエピソードである「あのころのぼくら」を一読するだけでもそれは知れる(これを先に読んで本編を読むのも悪くはないだろう)。とはいえ「兄妹」「男子寮」という妄想源もしっかりと機能しているわけで。それがないと読者も作者も物足りないわけで。
小原愼司二十面相の娘』3巻(メディアファクトリー
幼い日々を怪人二十面相の娘として育てられた少女チコの数奇な冒険を描くシリーズの第3巻。
二十面相の影を追い求めるチコと、彼女のかつての仲間であり、自分を捨てた二十面相を同じく追っているケンが、本土を遠く離れた白髪島で交錯する。そこで起こる連続殺人事件。犯人ははたして二十面相なのか。
終戦直後を背景にし、乱歩や横溝など猟奇ロマンへの志向を露にする本作だが、アニメ『鉄人28号』のような情念の空回りを逃れているのは、作者の(過剰な演出を可能にしない)乾いた描線と、人物と物語に対する独特の俯瞰的な視線に依るのだろう。それはそれとして私は小原愼司の描く、物欲しげなところのない毅然とした美少女が大変好きです。ああこんなことだから「まろんさんって本当にヲタですねえ」とムネカタさんに言われてしまうのだ。いや隠しようもなくヲタなんですけどね。