惨事のおやつ

1月31日の朝、東京に戻ってきました。函館日記の残りもおいおい更新しますが、まずは今日の惨事の記録から。書かずにはいられない。


帰省する前に冷凍した各種食材を自然解凍する。中でも興味があったのは一度凍結した未開封のプレーンヨーグルトの状態だったのだが、乳精と固形分が分離して、無数の白い顆粒が水の中に漂う無味無臭の謎物件に成り果てていた。試しに味わってみたが食えたものではない。
それでも諦め切れずネットで検索して、分離したものに暖めた牛乳を加えヨーグルトとして再生するという手段を試みるが、なかなか固まらない。さらに調べると「炬燵に入れると効果的」とある。ここで何やら不吉な予感が脳裡を過るのだが、まあ気を付けていれば大丈夫かと、足が当たらない奥の方に原液を入れた容器を置く。
そして音楽を聴きながらPCに向かって作業をするうちに案の定すっかりヨーグルトのことなど忘れ果て、体をほぐそうと足を伸ばした途端、何かが当たり倒れるのがわかった。急いで布団をめくり上げると、倒れた容器の蓋が外れ、固まり切っていない白い液体が絨毯に広がっている。粘性が高まったおかげで被害範囲は狭かったとはいえ30cm四方の広がり。そこからは紛うことなきヨーグルトの芳香が漂ってくるではないか。まさに炬燵と乳酸菌のコラボレーション。そんなヨーグルト生成の成功を確認したところでどうしようもない。「死ねばいいのに」と思った。私が。
まずはティッシュや雑巾に液を吸わせ、大方拭ったところで水をかけると、絨毯の繊維に染み込んでいた白い液が浮き上がってくる。それを新聞紙で掻き出してはタオルに吸わせることを数回繰り返した後、新聞紙や不要な布を載せた上からマグカップの曲面で馬簾のように擦り、残った汚れと水分を吸い取る。さらに、布をかぶせた上に雑誌や本で重しをしておきしばし放置。我ながら偏執的だと思うが、実際こうした作業にある種の達成感をも味わっているのだから始末に負えない。
三鷹駅前の書店とスタバに退避し、クリスチアナ・ブランド『ジェゼベルの死』(創元推理文庫)読む。約1時間半で帰宅後、被害地域から重しを撤去しドライヤーをかける。あとは炬燵が乾かしてくれるだろう。くれぐれも絨毯にしつこくこびりついているであろう原液が発酵しないことを祈る。ああ一仕事終わった気分だ。終わってないけど。とりあえず飯作ろう。