時間が動き出した

帰京の朝。出発間際に母が立ち上げたパソコンがフリーズ。パニックに陥りかけるが一旦留保、東京に着いてから対処法を調べて教えることに(結局、電源を強制終了して解決した)。雪が降るなか土産物で巨大に膨れ上がった荷物を抱えタクシーに。父が空港までつきあってくれて助かった。
久しぶりの飛行機。上空からの景色を覆っていた一面の雲は関東に近づくと一掃され、山脈のうねりがポリゴンの足りないCGのように見える。東北から関東北部にさしかかるあたりで、黄変したあばたのような無数のゴルフ場が、一所に固まって山々を蚕食しているのが目に入る。美醜を超えて凄い景観だ。人為による自然の改変という意味では、眼下の田畑や杉林や採石場と変わりなく、ダメージでは採石場のほうがよほど大きい。にもかかわらず、ゴルフ場の連鎖のほうがはるかに異様に見える。それが生産活動と無縁だからだろうか。あるいはゴルフ場で再生産された活動力がまた次のゴルフ場を作る、その閉じた系が周囲の環境を侵食していく、人間の営みの不思議さか。いつか訪れる者のなくなったゴルフ場に草が伸び木が芽吹き、周りの緑に飲み込まれる姿を幻視した。
羽田に着き、荷物をキャスター付きの袋に移し替える。これで何とか家に辿り着けそう。で、1ヶ月ぶりの陋屋に戻り、荷物を片付けて大家に挨拶し家賃を払い、PCを開いて作業し、自転車で武蔵関の床屋に行って髪を切り、家に戻り土産をまとめバスで三鷹駅前に移動して不動産屋に寄り賃貸契約を更新し、電車で吉祥寺に移動し井の頭線で渋谷へ出て、バスで山下スキル邸へ。何この忙しい人みたいな動き方。東京に戻った途端に停滞した時間が流れ出したようだ。どうも荷物を地面に引きずるなあと思ったら、4つのキャスターのうち2つが飛んでいた。
山下邸に5人が集合、イカ刺しとウニ、カニをつつきながら函館の地ビールを飲む、そういう豪勢なパーティ。会費は2500円だけど。いやーイカ美味い。母が醤油に漬け込んでおいたゲソを魚焼きグリルで焼くと、これがまた美味い。ウニもカニも美味い。中身を掘り出したカニの殻で出汁を取り、葱と豆腐で味噌汁を作ったらこれがまた美味い。カニ偉い。ご馳走を囲んで無口になることもなく談笑した後、鉄の意志で帰宅。長い一日が終わった。
振り返ると1ヶ月の函館滞在はあっという間で、数年ぶりの両親との暮らしも昨日の続きのようだった。正直故郷には敷居が高くて帰り辛かったのだけれど、これからは用がなくても帰ることにしよう。今度は4月末から1ヶ月ほど帰省する予定。例年なら花見の時期だが今年は早いだろうか。(2007年2月18日記)