『ヤングキングアワーズ』12月号(少年画報社)
六畳一間のアパートに光ファイバーが繋がるかと思えば、漫画雑誌の表紙を飾るのはかの超人ロック。時空連続体が歪んでる。まあ買ったのはロックではなく「それでも町は廻っている」が目当てだったのだけれど。その「それ町」は、なぜだかここ数年続いている「学園祭女子高生バンドもの」の歴史に輝かしい1ページを刻んだり刻まなかったり。このバンドのミクスチャーな編成がイカス。いきなりメイドの頂点に立つ紺先輩は反則。歩鳥は『ゼリー島殺人事件』を他人に読ませてるのか(笑)。タッツンの報われない恋に合掌。
と、いつもながら「それ町」は楽しかったのだが、この号の白眉はやはり巻頭50ページの大石まさる「水惑星年代記 なまいきサーヤ」だ。都会から田舎に引っ越してきた少女サーヤが、地元の子供達との軋轢の中で、攻撃性を暴発させながら自分も他者も傷つけていく痛ましいドラマを、世界が水没したノスタルジックな終末の風景とともに描いている。物語そのものは「児童文学」の典型的な話型に拠っているともいえるが、それが悪いわけではなく、むしろ話型は繰り返し語られることに価値がある。欲望に駆動される「萌えフォーマット」の上で児童文学的な作品性を実現する作風は、アニメーションでは佐藤順一などに見られるが、漫画ではあまり思い当たらない。大石まさるはこういう資質をどこで育んだのだろう。絶妙な絵柄のコントロールとともに作者の底力を感じる一編だった。