青空のかけらもなく

眠れないまま朝を迎え、渡辺篤史の水際立ったホメっぷり——台所にあった洋梨の形をホメ出した瞬間に吹き出した——をだらだらと眺めるうちに眠りに誘われ、目覚めると午後5時を知らせるひび割れたメロディが、雨戸の向こうの拡声器から流れていた。目に染みるような青空というものを久しく見ていない、ような気がする。せめて体に馴染んだ夜の大気を味わいにいこう。