悲しき亜熱帯

夜も10時に近付いた頃、武蔵境の書店の前ですれ違った男子高校生2人組に目が止まる。
少し色の抜けた長髪を外に流し、素肌に直接羽織ったワイシャツは胸元がはだけられ、ボタンが外された裾からは体毛のない滑らかな褐色の腹部が覗いている。2人とも細身の体つきで佇まいも似ている。
そんな彼等を見て私が思い浮かべたイメージは「東南アジアの男娼」という甚だサベツ的なものであった。高温多湿な夜の空気と、街に漂うハイビスカスのような甘い花の香りが、以前訪れたシンガポールの印象を引き出したせいかもしれない。それはともかく彼等が醸し出す雰囲気が、自覚的なセクシュアリティのプレゼンテーションのように感じられたのだ。これを「性的魅力に無自覚なゆえの無防備さ」と取るのは、むしろある種の萌え解釈だろう。
だが、ここまで書いたことは「最近の若い娘の服装は露出が多くてけしからん」という類の、自らを審判者の立場に置くことで性的視線を隠蔽しようとする、ありがちな物言いに似ているような気がする。
要するに私が若い男のコ(コじゃねーよコじゃ!)にもよおした可能性は捨てきれない。いやピクリともしませんでしたとも! 本当です!