未来人

たまたま早く目が覚めたので、昨日の夕方見られなかった鳥が見られるかと石神井公園に向かう。もう6時なのに空が薄暗いと思うのは、体内時計が夏のままなのか。千川上水のほとりに揺れるコスモスが一輪。ナナカマドだろうか、不気味なほどに密集した赤い実の重みに垂れ下がる枝の眺めに気を取られ、危うく自転車で轢きかけた鳩が足下から飛び立つのに驚いて転びそうになる。わずかに紅葉し始めた木々を映す石神井池の水面を横目にしばらく走ると、低く浮かぶ朝日が顔を出した。アカイアカイアサヒアサヒ。久しぶりにパン屋に寄ってクリームパンとソーセージパンを買う。パンを齧りながら石神井池を過ぎ三宝寺池へ。早速蓮池の奥にゴイサギを2羽発見。三宝寺池ではようやく飛来したオナガガモの群れが、常駐のカルガモを閉め出している。他にアヒル2羽、バンが4羽ほど。冬毛で体を膨らませた猫も数匹。階段上の広場でおばさんが餌をやっている。秋の花はフジバカマが盛り。もう一度蓮池を見遣ると、微動だにしない砲弾のようなゴイサギが、不意に大きく翼を広げ、水面を叩いて浮上するや宙を滑るように移動して行った。
公園を離れ上石神井ドトールに入り、コーヒーで体を温めながらコンビニで買った『週刊文春』を読む。巻頭グラビアを飾る仲間由紀恵の昔風の美貌に、この雑誌を50年代の人々に見せても違和感がないのではないか、むしろ代わり映えのない未来の姿に落胆するのではないかと考える。「正月映画『大奥』(東映)に主演」などという話題もいい感じに時代錯誤だ……と思う間もなく「携帯の着メロから生まれた企画CD『恋のスマッシュヒット』」などという一節が。「携帯って、何を携帯するの?」と尋ねる過去の人に、携帯電話がどのようなものかを説明する自分は、なかなかどうして未来人だ。
そんなどうでもいいことを、足早に駅へと向かう人の流れをガラス扉の向こうにぼんやりと眺めながら思う。