アンソロジー『日本ふるさと沈没』(徳間書店)

樋口真嗣監督による映画『日本沈没』リメイク版の公開を記念したコミックアンソロジー。原作者の小松左京公認のもと、参加した作者たちそれぞれの故郷が沈む姿を描く趣向になっている。のはいいがこの顔触れ、これなんて『少年キャプテン』かと。事実、企画ものであるだけでなく、近く新創刊される『月刊COMICリュウ』の露払いでもある。ちなみにその煽り文句が「OTAKUルネッサンス=TOKUMAルネッサンス」というもので、確かにこの『日本ふるさと沈没』を読んでいても、かつての「徳間的なるもの」が肌に感じられる。
その「徳間的なるもの」とは何かといえば「大きな物語」の枠組みとしての「日本SF」 がその基盤に存在するということだろう。特に小松左京筒井康隆の影響力を前提としたうえで、『少年キャプテン』執筆陣の傾向と、夢枕獏菊地秀行あるいは火浦功や岬兄吾といった当時の日本SFの流れは併行していたと思う。私は正直そのノリが好きではなかったのだけれど、「日本SF」ではなく「ライトノベル」の牙城でもある角川系が席捲する現状では、この『日本ふるさと沈没』の古いマニアの感触がむしろ懐かしい。
作品としては吾妻ひでおひさうちみちお(久々に読んだ)・鶴田謙二がベストだが、その他のどの作品にも共通しているのは「国土が失われることで明らかになる『日本=ふるさと』とは何かという問題意識」が、パロディに成り果てても失われていないということだ。このことが小松左京原作の提示した枠組みの強さを物語る。コマケン出身のとり・みきがトリを飾るのはわかってる編集だなあと思った。トニーたけざき安永航一郎が○島ネタでかぶってるのに笑った(しかもどちらも作品外での言及として)。果たして北方四島は沈むのか。