ある歴史資料

昨日古本屋で『POP・IND'S』25号(89年)を買ったら(800円)、表紙と巻頭インタビューが『omni sight seeing』を出したばかりの細野晴臣で、続いて英国ニッチポップに偏った名盤百選、小西康陽とストライクスの人の対談、METROTRON WORKSのパッケージライヴレポ、佐野元春高野寛、フェビアンのインタビューなどが並んでいた。席捲していたバンドブーム界隈にはまったく触れられていない。時代の片隅で息づいていた小さな音楽シーンを守るための橋頭堡といったところか。後世の人がこの本だけ読んだら、どんな89年の音楽シーンが復元されるだろう。
そんな時代の片隅の雑誌のさらに片隅に「ロリポップ・ソニック」から改名したばかりのフリッパーズ・ギターのインタビューが1ページ掲載されている。5人のメンバーのうち主に答えているのは小山田圭吾(雑誌表記は「圭悟」)で、小沢健二井上由紀子が一言ずつ。で、小山田が影響を受けたアーティストを多数挙げる中にラモーンズが入っていて、それにインタビュアーが違和感を表明したことに対する小山田の答え。
小山田「ラモーンズって“ラモーンズ好き!”みたいなルックスの人に好かれるでしょ(笑)。でもそういう人とはちょっと違うぞっていう自負はありますね」
先生! ラモーンズはオシャレに入りますか?(言葉遊び)
そんな89年のフリッパーズ・ギターに対するインタビュアー(不詳)の評言は「うん、マニアなんだけどおたくではなくて、やっぱりそういう意味ではさわやかなバンドだよね」であった。米国60年代ポップスを右に置き、ネオアコ系とニューウェーヴを挟んでラモーンズソニック・ユース、「ダイノソル・ジュニア」を左に置く、小山田の音楽地図はニッチなシーンではそう特異なものではなかったということだろう。まあ山下達郎が「長髪だけどJB好き」みたいなものですか(それはどうか)。