ラジオと鍋と

少しは涼しい朝のうちから炎の前に立ち、中華鍋を振り、土鍋をかき混ぜる。その間のBGMはピーター・バラカンのラジオ。ライヴ音源の特集、昨年のボナルー・フェスティバルでのスティーヴ・ウィンウッドの演奏、トラフィックの"Dear Mr.Fantasy"を歌っている。おお。
料理が一段落した午後、NHK-FM横山剣のラジオを聴き終え武蔵境に出て950円で散髪、少し本屋を覗いただけで帰路へ。やはりNHK-FM『蔵出しライブビート』聴きつつ再び厨房に立つ(厨房と呼べる場所があるわけではない)。
残りの料理を仕上げた後もやっぱりラジオ。深夜に入り高田渡・漣父子による公開録音が流れ出した。ここでの歌と演奏はとても良い。発声は明瞭かつ丁寧で、歌詞の内容がはっきりと伝わる(NHKのライヴで酒を控えたのだろうか)。また渡さんはギターがとても上手い。コードを乱暴にかき鳴らすことはほとんどなく、一音一音をしっかりとピッキングする。リズムも正確でグルーヴがある。今では達人となった漣さんのギターを前に一歩も引けを取らない。単なるスタイルとしての弾き語りでなく、楽器そのものに向かい合うミュージシャンシップは信頼できる。それにしても父子の共演はさすがに相性が良い。この組み合わせのライヴをもっと聴きたかった。番組MCの鈴木慶一氏は、聴きながら目を赤くしていたそうだ。
ところで映画『タカダワタル的』には、観客として私の姿も写っているらしい。自分で観た時は気付かなかったが、ひとにキャプチャ画像を見せてもらったら、「らしい」どころではなく確かに見覚えある弛んだ顔が写っている。ただでさえ失われにくい高田渡の記憶が、思わぬところで補強されてしまった。