施川ユウキ『サナギさん』1巻(秋田書店少年チャンピオン・コミックス)

望月サナギさんは中学1年生の女子。親友の倉田マフユさんと一緒に、日々世界に対する疑問や気付き、妄想を投げかけてみては笑っている。本編ではなく帯と背表紙から引用すると

サナギ:子供の心を持った大人ってカッコイイよね。でも
 大人にしかできない子供っぽいことってなんだろう?
マフユ:…………………酔拳


サナギ:!? 気付いたら 巻き尺で 2時間 遊んでた!!

こんな感じで、全編が「言葉のイリュージョン」による概念のずらしだけで成立しているギャグ漫画なのだ。おやじくさい言い方で申し訳ないが(だっておやじだもん)「今時のお笑い」だなあと思う。あるいは言葉の芸の在り方が「テキストサイト的」だと思う。別に「ブログ的」でもいいけどね!*1
では『サナギさん』において絵は意味がないのか、というとそんなことはない。そのシンプルで愛らしい絵柄が作者の知性を包み、あるいはポーカーフェイスで冗談をいうような落差の効果を生む。また、サナギさんたちの「中学1年生」という設定が「子供らしい(他愛のない)想像力」という落としどころを得て、サブカルやカルトの側ではなく「ほのぼの4コマ」と無理矢理いえなくもない場所に踏み止まることに成功しているのだ。*2顔の面白さで得をする芸人みたいなものか。
あーでも、この可愛さ愛らしさは決してフェイクではない。学校を休んだ日に布団の中で一人想像を巡らせる、サナギさん中学1年生の知性の機敏さ、輝きに萌える。萌え。

*1:ちなみに作者のブログはまさにテキストサイトだ。http://blog.goo.ne.jp/goo7974/

*2:掲載誌がチャンピオンな時点で充分にカルト的ではある。