近所のブックオフにて

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風忍『地上最強の男 竜』(双葉社)2000円→350円
週刊少年マガジン』がまだまだヒップだった70年代後半に連載された、伝説のサイキック格闘アクション。当時はその漫画の画面構成を逸脱するようなグラフィックデザインと、インナースペース描写とブルース・リーの映画が交錯する内容が、子供心に衝撃的だった。今読むと巻末解説で作者が明かすように、それらが「ブルース・リーと横尾(忠則)アート*1そして『LONE SLOANE』*2」などの混淆によって生まれたイメージであることがわかるが*3、同時にこれが記憶していた以上に漫画的な荒唐無稽を楽しめる作品であったことも意外な驚きだった。ところで、風忍はかのダイナミックプロの人であるわけだが、『デビルマン』とこの『地上最強の男 竜』を読み比べるに、一条ゆかり『デザイナー』に大矢ちきが与えたような影響力を、風忍永井豪に対して持っていたのではないか。こういうことが語られたインタビューを読みたい。
西島大介世界の終わりの魔法使い』(河出書房新社)1260円→350円
世界を滅ぼしかけた魔王を閉じ込めた刑務所惑星。その影響で住民はみな魔法を当たり前に使えるようになっていた。ただ一人魔法を使えず科学を信奉する少年は、魔法のホウキではなくエア・ボードで空を飛ぼうとしては失敗を繰り返す。そんな少年と魔法使いの少女との出会いは、やがて世界そのものを変えていく。セカイ系と呼ばれたまさに閉じられて他者不在の「セカイ」へのアンチテーゼを、作者は実にスマートに提示してみせているのだが、その手付きがあまりにも明晰すぎて、物語が模範解答の絵解きのように見えてしまう。一方で、シンプルなキャラクターが白っぽい背景の上で躍動する画像は、宮崎駿金田伊功の記憶を受け継ぐ西島大介の絵描きとしての魅力を感じさせる。流行に即した問題意識とアニメ的なグラフィックの結びつき。そこに「サブカル的」という反感が(正直私にも)生じてしまうのは、作者の思考と手の流暢さ(安易さ)が良くも悪くも対象との格闘を感じさせない「軽さ」に繋がってみえるからだろう。
TONO『カレンのファスナー』(白泉社)650円→350円
半裸の女の子たちが活躍するファンタジー短編集、と紹介しても間違いではあるまい。表題作の、身体に開けてはいけないファスナーの付いた女の子が、そのファスナーを男の子に開けさせる話に顕著だが、可愛くて華麗な絵の背後にある性的要素や悪意、皮肉がスパイシーな味わいを残す。

*1:何とカバー裏にもポスターアートが!こういう趣向に横尾作のサンタナロータスの伝説』ジャケを思い出す。

*2:フランスのフィリップ・ドリュイエ作のコミック。

*3:鈴木清順の影響には気付かなかった。