シオドア・スタージョン『海を失った男』(晶文社)

長らく長編『人間以上』『夢見る宝石』しか読めなかったスタージョンも、この1年半で次々に短編集が刊行され、名高い「ビアンカの手」も初めて読んだ。社会からの疎外感と他者との一体化願望、本物と紛い物、聖と俗、濃厚なエロティシズムなど、長編にも現れていたいくつかのテーマは、それぞれの短編にも明確に読み取れる。人間を生化学的な機械とみなす「成熟」はイーガンの先駆けだし、「海を失った男」の時間を混乱させた内面描写の超絶技巧はティプトリーばりだ。陳腐な言い種だが、早すぎる才能だったのだなあ。
ところで武蔵野市立図書館がリニューアルし、ネット経由での検索や諸手続きが可能になった。便利便利。さっそくスタージョンを返却、吉村萬壱『バースト・ゾーン』(早川書房)借りる。