原寸大フルスクラッチ

原寸大スコープドッグを拝みに、公開最終日に水道橋の会場へ。全高4mの鉄の塊として提示されたアニメロボットは、わざわざ作ってしまった作者の酔狂と、わざわざ見に来た客の酔狂の相乗効果か、荘厳な馬鹿馬鹿しさを巨体に纏いつつ佇んでいた。人型としては巨大とはいえ、戦車を直立させたような大きさと考えれば、兵器としてのリアリティも想像できる。ただし、大スケールの模型がしばしばそうであるように、プラモデルをそのまま拡大したような造型には細部の描写が足りない。特に平面の装甲板の組み合わせで作られたスコープドッグは、あまり近くで見ると間が持たない印象を受ける。見える範囲だけでも内部のメカなども加えてあると良かった(無茶な注文であるのは承知だが)。もう数メートル離れて見ることができれば、かえって迫力が増したのではないか。ちなみに会場でのベストショットは(写真撮影は不可)、左斜め前方2mから仰角で眺めた画であった。
スコープドッグ以外の展示品では、タイプライターと足踏みミシンを組み合わせたようなパソコンが魅力的だった。パソコンだけでなくヴァイオリンやエレキギターもそうだが、作者の造型の魅力は、それが単なるオブジェでなく実際に使える道具として発想、製作されているところだろう。スコープドッグもその延長で作られているのだろうが、だからこそ(これも無理は承知で)実際に手を触れてみたかった。体感的な、インタラクティヴなアートとしての可能性もそこには備わっていたのではないか。ステップを伝ってコクピットまでよじ登りたいと、あの場にいた誰もが思ったことだろう。