『仮面ライダー響鬼』十五之巻「鈍る雷」

「鬼め…」
闇の住人の、腸から絞り出すような呪詛の呻きを受け流すかのように、歴戦の勇士は不敵に応えてみせる。
「…鬼だよ」
うわああああああ、ザンキさんかっけええええええええ。
化け蟹に一敗地に塗れて以来、「ヘタレ」として認識していた輩は全員ザンキさんに土下座だ(含む私)。地面に足を踏み出すだけで古傷が痛むような満身創痍の体で、魔化魍へ極限の戦いを挑む斬鬼の男の戦いに震えっぱなしマジ泣きっぱなしの30分。超クールなザンキとヘタレ熱血後輩体質な戸田山のカップリングに(カップリングとか言うなー)私の中の腐女子脳が思わず起動。もう素晴らしいキャラ立ちですわ。雑誌やネットでギター鬼のデザインとコンセプトを見た時には、まさかこんなに壮絶な戦いを見せてくれようとは思わなんだ(太鼓とラッパで証明済みとはいえ)。鈍器の重さと刀の鋭利さを備えたギターを魔化魍に突き刺しつつ、弦を掻き鳴らして清めの音を送り込むという戦闘スタイルは、同じく接近戦専門の響鬼と比べても危なっかしい。いや、危なっかしく見えるのは、全盛期には易々と希代の名器を振り回していたのに違いない斬鬼の衰えを、適確に演出できているということだろう。ところでこのギター、ネックに張った弦とピッキングする部分が連結していない、アラン・ホールズワースの使用で知られる「シンタックス」系のデザイン。誰かオタク魂を持ったギタリストかビルダーに、実際に演奏できる「音撃弦・烈雷」を開発してほしいものだ。
そんなザンキさんのあまりの格好良さに頭を染め上げられた回だったが、『響鬼』の重要なテーマである「世代間の継承」を、鬼たちそれぞれの師弟関係の描写によって具体的に示す重要な一編でもあった。ザンキ・戸田山の間に流れる男臭い信頼、イブキ・あきらの緩やかな共感、そして師弟未満のヒビキ・明日夢の微妙な関係。弦を操る鬼たちの苦戦ぶりと、今回全く戦闘に参加しないヒビキ・イブキ・あきらの楽しげな日常描写との鮮やかな対比が、やがてヒビキやイブキにも訪れる運命の過酷さを仄めかす。これまでの設定とドラマの積み重ねが、この一話の大きな説得力に繋がっている。
戦闘場面に圧倒されながらも、『響鬼』らしい緩やかな日々の営みも疎かにせず描かれているのが嬉しい。パジャマのズボンに手を入れて手術の跡を気にする息子に妙な気を回す明日夢母、バイクを物色するヒビキに竜巻クラッシュの一件を指摘して凹ませるあきら、香須実の意外な音痴ぶり、戸田山にラブラブ攻撃の日菜佳、得意げにスーパーの特売の心得をイブキに説くヒビキ、ヒビキの訪問に慌てて部屋を片付ける明日夢親子など、もう楽しい楽しい。揺るぎない世界観に安堵しつつ、男泣きの世代交代劇が展開されること必至な次回が待ち遠しい。いやもう毎回書いてるけど待ち遠しいっスよマジでマジで。