『仮面ライダー響鬼』八之巻「叫ぶ風」

ヒビキさんを求めて山を彷徨い、キャンプ中のイブキさんとあきらに出会う明日夢。すでに過酷な戦いに身を投じているあきらの、明日夢に対する叱責は正論なだけに、明日夢の視点で観ている視聴者はあきらに反感を抱きかねない展開だ。だが「すぐに自分に引き寄せて考えるのがあきらの悪い癖」というイブキさんの指摘と、続く戦闘でさほど威吹鬼の力にもなれないあきらの姿から、彼女が自分の腑甲斐無さを明日夢に重ねていたのだということが自然に伝わる。鍛えているヒビキさんを援助し気遣う老婆にしろ、息子の自立心を喜びつつ寂しさを禁じ得ない明日夢の母にしろ、「きみとぼく」だけでは成立しない「社会」の拡がりが『響鬼』では明確に描かれていて、ヒーローものの世界観を大きくしている。あきらと明日夢の対立が、1話のうちに和解へと導かれるのもスマートだ。こうした小さな対立と和解は今後も繰り返されて、2人をそれぞれに成長させていくのだろうから。威吹鬼魔化魍「イッタンモメン」との戦いも、魔化魍の強大さが充分に描かれることで、遠距離戦専門の威吹鬼の戦いぶりに響鬼とは違う説得力を持たせていた。それにしてもイブキさんが格好良すぎてヒビキさんの影が薄くならないかと心配したが、今回は変身しないにもかかわらず、明日夢・あきら・イブキの3者それぞれを気遣い包み込む大人の男っぷりが大変に素晴らしい。このドラマの健やかさにおっちゃん涙が出そう。