「日本語のふぉーくとろっく」

05.3.20(sun) at mona records 下北沢のライヴスペース&おんがく食堂。日本の良質インディーズCDもいっぱい。
open 20:00/start 20:30 (all night)
¥3,000(DJタイムのみの場合¥1,000+drink)
LIVE http://machikadoyu-en.ddo.jp//Early Times Strings Band/ Freebo
DJ(予定)川村恭子/あべマン/菅原圭立石郁宗像明将山下スキル/風街まろん
てなわけで終わりました「日本語のふぉーくとろっく」。日本語のロックとフォークの来し方と今を、ライヴとDJで楽しもうというこのイベント、飲みの席での軽口に終わるかと思いきや、こんな大事に発展しようとは。
宗像さんの、場の空気とイベントの主旨を読み切った、現在の「日本語のふぉーくとろっく」な選曲に載せてお客さんが入場、音楽の現場に居合わせたベテランから90年代に洗礼を受けた若者まで、小さなmona recordsの会場を埋め尽した。そしてライヴ開始。
まちかどゆうえんは、いちかたいとしまさ級に「大瀧さんそっくり」だと聞いていたのだが、まさに。はっぴいえんど時代からファーストアルバムを思わせる瑞々しさを湛えた歌声が、完璧に再現というかパッケージされていたのに驚く。歌い出した瞬間から頬が緩みっぱなし。初期松本隆的な叙情/叙景的な歌詞も実にらしい。で、最後にはっぴいえんど「抱きしめたい」を歌ったら、これが似ていないんだ(笑)。大滝さんそっくりなオリジナルより、カバーで本人の色が出る不思議。どちらかといえば遠藤賢司みたいだった。
アーリー・タイムス・ストリングス・バンドは70年代から活動するジャグバンド。この日のお客さんの大部分が彼らを目当てに来たに違いない伝説のバンド。だがこの伝説は「触れる伝説」であり、今も生きているのだ。サウンドチェックでは曲らしい曲よりもセッションを楽しんでいたように見えたアーリーの面々、だが始まってみれば、各人の手に馴染んだ練達の演奏が戯れ合い絡み合い、長年連れ添った仲間ならではの熱い/厚いグルーヴが生み出される。しかも、メンバーそれぞれの声がさすがの役者ぶり。情念を絞り出す渡辺勝の唯一無二な声、都市の中に息づき管を巻く村上律の生活者の声、背筋がぴんと伸びた今井忍の二枚目な声、剽逸さ漂う松田幸一の癒しの声、そして竹田裕美子の少女の初々しさを残す声。個性的な声が時に飛び出し時に支え、一体となってハーモニーを作るさまは、これぞバンドマジックだ。
フリーボは90年代にデビューし注目を集めたフォーキーなロックバンド。現在は石垣窓gと吉田奈邦子vo,acg(今は御結婚されて名字が変わった)の2人となっているが、今回はベースとドラムを加えた4人編成。アルバムではカントリー・ロックのダイナミズムより、吉田奈邦子の美しい歌声を生かした端正さが際立っていたけれど、生演奏では豊かな空気感とグルーヴが加わり、聴衆を包み込む余裕と親しさがあった。作品を聴きライヴを見たいと思った時には開店休業気味だったバンドだけに、今回の1年ぶりというライヴを見ることができて嬉しかった。
ライヴ後は朝までDJタイム。よりによって私がラスト。DJ各人の持ち味が生きるプレイに感心しつつ、用意したネタが被りまくって焦りつつ、時間はあっという間に過ぎて出番が。酒も控え目に臨んだものの不馴れな器材の扱いにミスを冒してしまったり。ううう。
何はともあれこんなセットでした。
赤い鳥「河」(『竹田の子守唄』71年)
吉田美奈子「週末」(『扉の冬』73年)
佐藤博「バッド・ジャンキー・ブルース」(『TIME』77年)
ブレッド&バター「ザ・ラストレター」(『LATE LATE SUMMER』79年)
泉谷しげる「おー脳」(『光と影』73年)
RCサクセション「ファンからの贈りもの」(『シングルマン』76年)
吉田拓郎「笑えさとりし人ヨ」(『人間なんて』72年)
岡林信康「家は出たけれど」(『1973PM9:00→1974AM3:00』74年)
尾崎亜美「BOOMING CRACKER」(『MIND DROPS』77年)
荒井由実「コバルト・アワー」(『コバルト・アワー』75年)
高橋幸宏「MIDNIGHT QUEEN」(『サラヴァ!』78年)
矢野顕子「ト・キ・メ・キ」(『東京は夜の7時』79年)
マグースイム「昨日はもう」(『糸の鎖』4曲入りシングル 97年)
風都市系が正史として語られがちな場所では軽視されそうなエレック系、青い森系(笑)、ニューミュージック系をあえて取り上げてみようと頭では考えてみたものの、実際に会場のそこかしこに当時の伝説の人々を目にすると、さすがにまずかったかと不安になっていたのだが。まあ何とかなったりならなかったり。矢野さんに代理MCで「今日はどうもありがとう、とても嬉しかったです」と言ってもらった後、その矢野顕子のカバー「昨日はもう」をラストに。70年代の終わりと80年代の始まりを告げる矢野顕子&YMOの演奏に続けて、90年代ならではの「日本語のふぉーくとろっく」の今に繋がる名演・名解釈で、イベントの結語とした意図は伝わっただろうか。石垣さんにマグースイムとフリーボが、レーベルメイトとしてごく近くにいたことをお聞きできたのも嬉しかった。
結果的にライヴの演奏者とDJ全員で、過去から現在に至る「日本語のふぉーくとろっく」をフォローできていたのではないか、と自分のことは棚に上げてこの際言ってしまおう。過酷な長丁場におつきあいいただいたお客さん、mona recordsの皆さん、素敵な演奏、選曲を聴かせていただいた出演者の皆さん、そしてイベントを実現させた首謀者であるところの「かものはしばし」さん、ありがとう、ありがとう、ありがとう。
この次はモモモモモモ、モア・ベターよ!