いしかわじゅんによる吾妻ひでお『失踪日記』書評

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かつての宿敵いしかわじゅんによる適確かつ愛のある感想。ニューウェーヴと呼ばれた一連の漫画家の中で、最も泡沫と思えたいしかわが、最も活動を継続させていることは不思議なようだが、彼は吾妻や大友、江口寿史といった才能を間近にして、自分の立ち位置を早々に定めることを迫られたのだろう。いしかわじゅんの才能は「見巧者」のそれであり、優れた才能をいち早く見出したり、シーンの見取り図を明確に描くことができたが、創作で抜きん出た存在ではなかった。いしかわの現在に至る活動基盤を作ったのは『フロムK』の成功だろう。彼はこの作品で創作の現場から一歩引きつつ、創作者たちのいる風景を自分込みで描くというスタンスを確立した。この手法によっていしかわじゅんは、吾妻ひでおが陥った創作の地獄から逃れたのだ。それを非難するわけではなく、自分の才能を見定めつつ、自分と状況との距離を計りながら漫画とともに生きた30年は、また過酷でもあったに違いない。と、吾妻ひでおの30年のついでに、いしかわじゅんの30年にもちょっとだけ思いを馳せたりしたのでした。