雪のマニマニ

夕方になって、大家に家賃を払うため外に出る。そろそろ出ていけと言われることもなく、更新料も何とか払えそうだ。これでまた昨日の続きの日々が訪れるのだろう。外気に触れたついでに、三鷹駅前まで自転車を走らせる。顔に冷たいものが降り注ぐと思ったら雪。道理で寒いはずだ。ツタヤで雑誌を立ち読み、ドトールで読書。
北村薫『ターン』(集英社文庫)読了。交通事故をきっかけに、一人きりで同じ一日を無限に繰り返す、孤独な時間のループに入り込んだ女性の物語。時間テーマのSF的発想を、技巧を駆使し普通小説の枠内で描き切るところが北村薫らしい。親本刊行時に読者から指摘された、論理の矛盾に対する釈明に紙幅を割いているのは、さすが本格ミステリの人というか。変化しない日々の繰り返しの中で、人がいかに無気力に陥らず生きていくかというテーマは、刊行された97年当時の、いわゆる「終わりなき日常」に対する作者の解答なのだろう。SFとしてもミステリとしても魅力的な趣向が、あからさまな寓話に着地してしまうのは少し物足りない気もする。それにしても北村薫が描く「清廉に生きる市井の女性の美」はあまりに美しすぎる。美しいものを美しいと非難するのは理不尽なのだろうが。
続いて野尻抱影『星まんだら』(徳間文庫)を開く。大佛次郎が抱影の実弟であることを初めて知った。冒頭の3編を読み終え店を出る。
勢いを増した雪をかき分けるように移動、ブックステーションとブックオフを回る。ブックオフのワゴンでちょっと面白いCDを見つけたがスルー。明日も残っていたら縁だと思って買おう。