東村アキコ『白い約束』(集英社りぼんマスコットコミックス クッキー)

きせかえユカちゃん』の作者のデビュー作を含む読み切り3本を編んだ作品集。この人の持ち味は「少女漫画の王道」をついつい迂回してしまう「オフビートなセンス」だと思っていたのだが、表題作を読んで認識が変わった。つーかびっくりした。凄いですよこれ(「白い約束」という題名も凄いが)。以下ネタバレ。
「好きなんだ」と言い残して去った彼のことを、思いを伝えられないまま「運命の人」と待ち続けて1年、彼は彼女のもとに戻ってきたのだった。ITベンチャー代表取締役の肩書きと、彼女と彼女に預けた猫と暮らす高級マンションの鍵を携えて。うーわーなんじゃこりゃー。ていうかベタな少女漫画の定型の果てにやってくる幸せが「イケメンでガツガツしてないさわやかホリエモン」というのはどうよ。どうよと言いつつ私はこの漫画好きなんだけどさ(笑)。シンデレラ・コンプレックスがどうのこうのをぬけぬけと踏み倒す、垢抜けた表現に隠された少女漫画としてのボトムの強さが。それにしても現実逃避の漫画で負け組の傷を抉られるみたいな。東村アキコは駄目男を描くのが非常に上手い人だけに、何か裏切られた気分ですよ!(逆恨み)いや好きだけどね。うわーん。