GONG/EXPRESSO II('78)

アレン、スマイス、ヒレッジらヒッピー組が脱退したゴングは、ドラマーのピエール・ムーラン(モエルラン)によって継承され、サイケデリック部分を捨象して超絶ジャズロックバンドと化した。同時期の、やはりドラマーが率いるジャズロックバンドとしてはブラッフォードが思い浮かぶ。メンバーにアラン・ホールズワースを共有していることを措いても、その音楽性には通じるところがなくもない。ただし、ブラッフォードにはデイヴ・スチュワートという強力なキーボード奏者が存在したが、ムーランのゴングに鍵盤奏者はいない。その代わり、シロフォングロッケンシュピールマリンバヴィブラフォンといった鍵盤打楽器が重要な役割を占めており、ファンキーなリズム体の上で複雑な旋律を絡ませながら疾走するスリルは他に類を見ない。辛うじてルース・アンダーウッド在籍時のマザーズが近いだろうか。アルバム最後に収録された"Three Blind Mice"の格好良さは格別で、以前けいさんがStrange Music Nightでかけたのを聴いて以来心に引っ掛かっていたのだ。デイヴィッド・アレンじゃないゴングも良いじゃないか。ゲストのホールズワースのギターとダリル・ウェイのヴァイオリンが、抽象的な構築美に叙情性と浮遊感を重ねている。