山本ルンルン『マシュマロ通信』3巻(ジャイブ)、『オリオン街』1巻(同)

お洒落が大好きで可愛いけれど、ミーハーで周りに流されやすいスモモ。
ちょっと野暮ったく流行にも無関心だけど、表現活動に熱心でマイペースなみどり。
同級生のお洒落グループに憧れるスモモは、幼馴染みのみどりを邪険にする一方で、確固たる自分を持っているみどりに一目置いてもいる。
いわばギャル系とアート系の女の子の組み合わせは『Cookie』や『YOUNG YOU』『FEEL YOUNG』などの掲載作品にも見られそうだが、この『オリオン街(ストリート)』は『朝日小学生新聞』に連載されたもので、スモモもみどりもまだ10歳の小学生なのだ。人間関係と自己実現。女の子は小学生にしてこんなシビアな主題に直面させられるのかと思うと痛々しい。実際本作でのスモモの描写のイタさに、私はしばしばページをめくれなくなってしまったのだった。絵はめっちゃ可愛いんだけどね。糖衣に包まれた苦い薬のような漫画。
2002年発表の『オリオン街』では周囲の空気にいかに順応するか悩んでいたスモモだが、これが2年後の『マシュマロ通信』になると、ジャイアニズムを堂々と押し通すサンディを中心に、マイペース極まる登場人物たちが時に連帯し、時に離脱したりしながら、不思議な街の日常を飄々と生きている。この移り行きは作者の心境の変化もあるのだろうが、日々を過ごす余裕や大らかさが、いま求められていることを映してもいるだろう。画力の発展も著しく、俯瞰や仰角を多用し人物の全身を入れ込む画面は、背景の部屋や建物をモデリングしてるんじゃないかというくらい決まっている。アニメ版との比較もお楽しみだが、「ジャスミンの秘密」の原作版の容赦なさと言ったら……。