読もう!コミックビーム

例によっての表紙買いで(エマさん)購入した『コミックビーム』9月号が大変に面白かった。
まず目玉はその「エマ」の作者・森薫と、先月から始まった「機動旅団八福神」の福島聡の合作「すみれの花」。何と別冊付録だ。高校の美術部で出会った女子二人の、一筋縄ではいかない交流を描く物語そのものよりも、この作品の成り立ちのほうが面白い。巻末で製作過程が明かされるのだが、最初の数ページを読むだけで、全てのネーム(コンテ)を福島聡が切ったのだと判る。森薫はそれを元に背景と人物を作画しているのだが、それで森薫の絵の色気が福島の理知的な作風に加わったかと言えば、そんなこともない。これはほぼ9割方が福島聡の作品だと言えるだろう。宮崎駿押井守がガチガチのレイアウトで原画マンの個性を縛るように、福島のネームも森薫の個性を相当部分削いでいる。もっともこの場合、森薫福島聡をリスペクトするあまり、描線を福島のそれに近付けているのも大きな理由なのだが。いずれにせよ『ビーム』ならではの面白い試みだと言える。(私は未読だが)小畑健による「ボボボーボ・ボーボボ」には負けるかもしれないが…。
で、合作ではないそれぞれの作品だが「機動旅団八福神」、今時の若者を旧軍的組織に放り込んだ場合の葛藤や変化をまともに描こうとする試みは、ひょっとしてファーストガンダム以来だったりするのでは(そんなことはないと思うが。私が思い出せないだけで)。もしかして面白くなるのだろうかこの漫画。
「エマ」は……もう趣味の世界だなあとしか。作者のメイドへの凄まじいフェチに圧倒される。
あと桜玉吉御緩漫玉日記」の譫妄私小説っぷりも色川武大の域に達してきてますます読ませるが、今月号で圧巻なのは小池桂一ウルトラヘヴン」の一挙48ページ掲載だ。というのも、先月号の編集ミスで1回分を飛ばして次の回を掲載してしまったフォローとして、今月号はその飛ばした24ページを加えた2回分の原稿を載せるという豪快な台割。何というアナーキーな雑誌だろう。内容も高純度なペーパードラッグで文句無し。