O Caroline 

武蔵境のエクセルシオール・カフェでアントニオ・ネグリマイケル・ハート『<帝国>』を読む。先月から延々と、図書館の返却期限を大幅に超えてなお読了できない。
集中力が途切れた一瞬に、聴き慣れた歌声が耳に飛び込んでくる。大勢の客の思い思いのお喋りが重なり合ったノイズをかき分けて届く、悲しく嗄れて感情を真直ぐに伝えるあの声。ロバート・ワイアット。曲はマッチング・モールの1st冒頭の名曲「O Caroline」だ。普段はブラジル音楽が流れることが多いこの店で、ワイアット、しかもマッチング・モールと出会うとは。湿った歌声が、美しいメロディが人々の話し声に埋もれて消えてしまうまで、私は全神経を集中してそれを聴いた。そして今日も『<帝国>』は10ページしか進んでいない。そういえばワイアットは今でも共産党員なのだろうか。