福島聡の新連載

コミックビーム』8月号をふらふらと購入。中身を見ずに買ったので、「エマ」の休載に気付かず。あるとないでは充実感がずいぶん違う、というのも看板連載の力ではある。…orz
今月号から福島聡機動旅団八福神」が新連載。巻頭カラーに加え雑誌の表紙を飾る。今回購入したのは、編集デザインも含めたこの美しい表紙によるところが大きい。
それで内容だが、鬼頭莫宏といい遠藤浩輝といい、ロボット戦争ものに「僕たちのリアル」を重ねたがるのは、30歳前後の漫画家の宿痾なのだろうか。
謎の存在との戦闘が続く近未来の、あるいはパラレルワールドの日本。おそらく志願して軍に入隊した普通の青年が、入隊式で少女に出会う。その会場を襲う謎の浮揚ビーム兵器。なすすべもなく蹂躙される新兵たち。少女は異様な生物的容貌のパワードスーツ「福神」パイロットとして、卓越した能力で敵を撃破。炎に包まれた彼女の「福神」のもとに、「考える軍人」たろうとする少年は、上官の命令を無視して生身で救出に向かう。
ロボットアニメの第1話としては『蒼穹のファフナー』など足下にも及ばない優れた「つかみ」である。にも関わらず、こうしたものを「描けてしまう」福島聡の筆力に驚きながら、今一つ心が動かない。
福島聡は普通の表現者よりも遠くに手が届く漫画家だが、手が届いたところで表現として完結してしまうような物足りなさをいつも感じるのだ。『少年少女』で傑作と思えるエピソードは、遠くまで手を伸さず、そのぶん近景を濃密に描くことで生み出されたものではないか。
「しょぼい黒田硫黄」という評言(紙屋研究所)が今のところ至当と思えてしまう福島作品が、このヲタスタンダードな物語をスタンダードから外れる筆致で描く時、新たな水準を達成することができるのか。何か言いたくなるような訴求力は備えた作品だけに読み続けてみたい。