コーヒー

番茶が切れたので、コーヒーをがぶがぶ飲んでいる。わずかな豆で4杯分は淹れるので、アメリカン程度の薄さ。旨いコーヒーの淹れ方も知らないのは、無数にある「いい歳をして恥ずかしいこと」の一つかもしれない。こだわりのある大人の男などに興味はないが、せめてドトール程度の味を自分で再現したい。山川直人『コーヒーもう一杯』の一編に美味しいコーヒーの淹れ方を描いた話があって、真似してみようと思ったのだが『コミックビーム』掲載号がどこかに行ってしまった。
たまに無性に飲みたくなるのが、神田伯剌西爾(ブラジル)の、カップの底に粉が沈んだ泥のように濃いコーヒーだ。神保町にもずいぶん足を運んでいない。そういえばあの辺りには「さぼうる」「ミロンガ」「ラドリオ」と、店名に南米のおもかげを宿すコーヒー屋が集中している。現在のいわゆる「カフェ」が、ヨーロッパのイメージに依拠しているのとは対照的だ。旧宗主国と旧植民地。この違いから何か考察めいたものをひねり出せるのかもしれないが、いかんせん暑い。流れ出る汗の分だけ、また薄いコーヒーを喉に流し込むのだった。