東京モダニカ vol.5

東京モダニカ vol.5
2007年3月30日 南青山レッドシューズ
出演:KILLING TIME
板倉文(g)/MECKEN(b)/清水一登(key)/Ma*To(key,tabla)/Whacho(perc)/青山純(ds)/越川歩(vl)
unbeltipo trio
今堀恒雄(g)/佐野康夫(ds)/ナスノミツル(b)
DJ:岸野雄一/ホッピー神山
80年代のプレ・クラブシーンを再現するという趣旨はともかく、何より板倉文復帰後2度目となるキリング・タイムのライヴ、そしてウンベルティポ初体験と、大いに足を運ぶ価値のあるイベントだった。
キリング・タイムはめったに聴けないフルメンバーによるものと思いきや、ヴァイオリンの奇人・斎藤ネコがスケジュール会わず不参加(会場には来ていた)、全員集合はならず。代わって入ったゲストヴァイオリンの越川歩に配慮してか、どこに流れ着くかわからない奔放な逸脱ぶりはやや控えめに、そのぶんブラジル音楽のサウダージが濃く漂う、端正だが充実した演奏となった。ゲストヴォーカルには福岡ユタカが加わり、朗々とチャントを鳴り響かせた(私はその場面を個室で力みつつ聴いていたのだが)。演奏の安定感はゲストへの配慮もあるが、やはりリーダー板倉文の復帰も大きいのだろう。ブランクを感じさせない確かな指遣いでその存在感をアピール。もう長期留学あるいは単身赴任はないよね?
ウンベルティポは最初に出した12インチしか聴いていなかったので、人力ドラムンベースという先入観を今だに持っていたのだが、3人という最小編成で奏でられる音楽は、阿吽の呼吸で自在にリズムを伸縮・変換させながら高速爆音で疾走する、凄まじくソリッドなものになっていた。フランク・ザッパを出発点とする今堀恒雄の複雑怪奇なフレージング、飄々とボトムをうねらせ続けるナスノミツルのベースもさることながら、シンプルなセットから多種多様なリズムを恐ろしい切れ味で叩き出す佐野康夫のドラムが凄まじい。ロバート・フリップではないが、変拍子こそが生命のリズムなのかもしれない。ウンベルティポの音楽に身を委ねることは苦行などではなく快楽そのものだった。
キリング・タイム、ウンベルティポともルーツにはフランク・ザッパの影響があると思われるが、前者はその折衷的な拡張性を緩やかに受け継ぎ、後者は幾何学的なリズムの構築をより堅固に追及しているのが面白い。この組み合わせは実にナイスでした。