グレッグ・イーガン『ひとりっ子』(ハヤカワ文庫)

これまでの作品集に比べると衝撃・感銘とも薄く感じられるのは、「テクノロジーの発達によってもたらされる人間性の変容」を描いているように見えながら、実際には「決して変わらない人間性の本質への信頼」をエモーショナルに描くという、イーガンの作風に慣れてしまったからだろうか。最先端のSFはもうちょっと人でなしであってもいいような気がする。そうした作品群の中では「ルミナス」が異質で、山田正紀が曖昧にしか表せなかった「神の言語」を、イーガンはかなり説得力をもって示しているように読める。