財布にはいつもユニオンの割引券が

吉祥寺ディスクユニオンにて2枚1239円。
高橋幸宏『ONCE A FOOL…』(85年)
ムーンライダーズとともに設立したTENTレーベルでの第1作。冒頭のインスト曲での、坂本龍一のキーボードと矢口博康のサックスの音色、加えて全編で鳴り響くゲート・リヴァーブの効いたドラムサウンドが、85年という時代の刻印をアルバムに残す。新レーベルでの看板を背負うという自覚もあったのだろう、前作『WILD AND MOODY』での謀反気あるハイパー・テクノ・ファンクな趣は後退し、アルファ時代の3部作のようなポップ性・叙情性が戻ってきている。とはいえその3部作ほどの普遍性に達していないように思えるのは、先にも触れた時代を感じさせる音作りと、あえて言うならすでに自己イメージの再生産が始まっていたからだろう。楽曲面ではトッド・ラングレン"I SAW THE LIGHT"のカバーを含め、矢野顕子鈴木博文吉田美奈子細野晴臣らが作家陣に名を連ねた佳曲が並ぶ。YMO解散後の元メンバーが揃うあたりは、ビートルズ解散後のリンゴみたいな存在感だ。

ソー・バッド・レヴュー『SOOO BAAD REVUE』(76年)
70年代に「関西ブルース」と言われたシーンの中核を担うバンドの残した、LA録音になる唯一のスタジオ作。山岸潤史と石田長生ツインギター北京一と砂川正和のツインヴォーカル(石田を含めればトリプル)、チャールズ清水と国府輝幸のツインキーボードという大規模な編成を生かし、正統派のブルースからホーンをフィーチャーしたベイエリア・ファンク(ホーンは実際にタワー・オブ・パワーだったりするのだろうか)、演歌レゲエ、フュージョン寄りのバラードなど多彩なサウンドが聴ける。関西ブルースという雑駁な用語は、ずいぶんと後世のイメージを誤らせるだろう。とはいえアルバム単体では何か一味足りない気がするのも確かで、CD化で「WHAT'S GOING ON」(ライヴ盤から収録)がラストに据えられて収まりが良くなった。元芸人の北京一の存在の面白さなど、できるなら当時のライヴでその真価に触れてみたくなる。