Muzak on the Move

-romantic bad loser presents- Muzak on the Move
2006年4月20日 三軒茶屋GRAPEFRUIT MOON
出演:大塚日出樹(CAT or DIE)
Hel(SakiyoTobita,TetsuroYasunaga from MINAMO,Jason Fank,asuna)
Saturday Evening Post
Yo-Ho (koryo+nonoho from Co-rchestra)
齋藤紘良さん率いるSaturday Evening Post主催のライヴイベントへ。三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONは初めてだったけど、適度な広さと落ち着きがあって感じのいい店だった。全体的に音響派〜フォークトロニカ的な内容、しかも平日にもかかわらず結構な集客で、これは主催者の人徳か音楽への期待か。
最初に登場したCAT or DIEは、生ギターとフルートの大塚日出樹を中心とするユニットで、今回は4人編成なのになぜかトリオを名乗る。ギターやフルートの即興を聴かせる大塚の存在感は60年代末の吟遊詩人の風情だが、街頭演奏ではなく閉じた室内でサンプラーとの共演を選ぶのが21世紀らしい。採集された自然音やノイズ、女声のハミングやおもちゃの楽器の響きが、客席のざわめきと混じり合って1度きりの場の空気を醸し出す。その表現を味わうには聴くものが注意深く耳を傾けなくてはならず、気を逸らせば空気に同化してしまう。退屈さえも贅沢な味わいの一部かもしれない。
2番手のhellはそれぞれに活動拠点を持つアーティストのユニットらしく、シンセサイザーとヴォーカルの女性とギターの男性は床に座っている。地べた系だ。CAT or DIEもそうだが、メンバーがクラリネットアコーディオン、生ギターなどさまざまに楽器を持ち替え、ロック的な編成から逸脱した自由なアンサンブルを作るのが面白い。アンサンブルといっても決めごとがあるわけでもなく、シンセサイザー通奏低音の上を多彩な音が時に戯れ時に渦を巻き、スキンヘッドの白人男性のドラムが硬い響きで句読点を打っていく。音の緊張感と佇まいに不思議な吸引力があった。
Saturday Evening Postは過去に数回観たことがあったが、その時は前2ユニットにも通じる流動的な音楽性で、表現手段の一環として音楽もあるといった感じだった。なので、快活にバタバタとビートを繰り出す女性ドラムを背に、チェロを弾きながら歌い踊りMCの受けに苦慮する(笑)リーダー齋藤紘良さんの姿は楽しくも思い掛けないものだった。多彩な表現衝動が音楽に収束した、一言で言えば「ミュージシャンになった」。そうなると今度は演奏の覚束なさや学芸会的な演出が気にならなくもないが、同時に魅力でもあるそのホームメイド的な手触りをうまく残しつつ洗練するような道を期待したい。フォークもジャズもブラジル音楽も溶け合った無国籍な音楽に、のこぎりヴァイオリンの儚くも愉快な音色が効いていた。
余裕を持って帰りたかったので、最後に登場した紘良さんのラップトップによる演奏は聴けなかったのだが、これが良かったようで残念。まあ次の機会もあるでしょう。