KYON『6210 IN MY HOUSE』(96年)

お茶の水タクトレコードにて千円。元ボ・ガンボスの鍵盤奏者が高橋幸宏コ・プロデュース(プロデュースは本人)、山本耀司ヴィジュアル・プロデュースのもとコンシピオからリリースしたソロアルバム。肝煎り二人のお洒落な外見とは裏腹に、本作にはアメリカ南部の香りが染み付いたアーシーな音楽が詰まっていて、叩き上げの70年代ロックのリアリティを感じさせる。ゲスト陣の豪華さ、とりわけリズム体の顔ぶれは特筆すべきで、細野晴臣高橋幸宏小原礼鈴木祥子井上富雄・岡地曙裕/PAUL JACkSON・古沢良治郎(!)などの錚々たる面々が繰り出す練達のリズムの上で、Dr.KYONのピアノが歌い跳ね転がり回る様は痛快だ。中でも細野・幸宏組が参加した2曲はやはり最高で、バンジョーの早弾きとともに疾走するロックンロール・ナンバー「その気でやる気」、漣健児が詞を乗せた翻案リズム歌謡「スクスク」のラテン入ったニューオリンズ解釈など、往年の夕焼け楽団を思わせるノリでとても楽しい。本人の歌は上手いとは言えないのだけれど、わざとらしさのない太い歌声が、開放的で浮遊感のあるソングライティングと相俟って気持ち良く聴けるものになっている。佐野元春佐橋佳幸井上富雄など、後のホーボー・キング・バンド人脈も協力。