ROBERT PALMER/HONEY('94)

レンタル流れで380円。ポール・サイモンデヴィッド・バーンを思わせるアフリカ音楽へのアプローチを聴かせる冒頭から、ロバート・パーマーの音楽的な冒険心は変わることなく旺盛だ。ただし、アルバム全体ではファンク的な楽曲が主体で、生のリズム体と打ち込みのリズムの共存も違和感がない。むしろ収まりが良過ぎるのが物足りないくらいだ。当時話題になったのだろうヌーノ・ベッテンコートの参加も、飛び道具として突出させることなくサウンドの一部として組み込まれている。むろんクライマックスではハード・ドライヴィングなソロを聴かせるのだが、それ以上にファンキーなリズム・カッティングが印象に残り、エクストリームというバンドがミクスチャーロックの文脈からも評価されていたことを思い起こさせる。ただ、そうしたパーマーのプロデューサーとしてのバランス感覚が自身のヴォーカルにも適用されて、歌声もサウンドのピースに収められてしまい、歌手としての存在感が今一つ希薄なのが惜しい。全体に、これまでの作品にあった逸脱感が足りないようにも思う。とはいえロバート・パーマーに駄作なく、本作も多彩な音楽性をコンパクトに集約した快適なファンク・サウンドを楽しめる。