iTMS祭りを他所に

私はブックオフで4枚千円祭りです。*1
LISA LOEB/FIRECRACKER('97)
裸ワイシャツげなジャケで買い。メガネが似合うクールな美貌にやや甘い声、ざっくり刻むアコギを中心に弾むギターポップな演奏。川本真琴坂本真綾や幾多のギタポ女子の線を伸ばすと、そこにはリサ・ローブがいるといえなくもなかったりなんかしてからに。メガネでロックな方面はさておくにしても、「あなた」を反射板に「わたし」を見つめる内省的な歌が、オルタナでフォーキーなサウンドに乗って心をくすぐる。マーク・スペンサーのギターはちょっとフリップ/ブリュー的な空間系。この音のエンジニアにボブ・クリアマウンテンの名があるのが意外な気がした。
ALISON MOYET/ESSEX('94)
聴いただけでは白人とは思えないソウルフルな歌声だが、打ち込みより生楽器の比重が高い演奏は、それほどファンキーではなく白人ロックに近い。むしろヤズー時代の打ち込みサウンドのほうが、ヴォーカルの質を生かしていたようにも思える。それでも圧倒的な歌唱力を味わうには充分。
MILTON NASCIMENTO/ANGELUS('94)
NATIVE DANCER('75)以来の相性の良さを発揮するウェイン・ショーターをはじめ、ハンコック、ディジョネット、メセニーらの参加は驚かないが、ジョン・アンダーソン、ピーター・ゲイブリエルジェイムス・テイラーの共演にはさすがに驚いた。それぞれに掛け替えのない声を持つ英米の白人歌手が、ブラジルの天才を前に謙虚に寄り添う姿が、ナシメントの大きさを改めて意識させる(なかでもJTとのデュエットは感動的)。豪華多彩なゲスト、大規模なオーケストラ、強力なグルーヴのリズム体を合わせても、それらに相殺されることのない野生の歌。大規模編成でもアコギと打楽器のみの簡素さでも、揺るぎない主役の存在感を保ちながら、押し付けがましさを感じさせないバランス感覚が秀逸だ。
渡辺美奈代『恋してると、いいね』(89年)
鈴木慶一渚十吾の共同プロデュースによる、メトロ界隈の人材を総動員したガールポップの佳作。主役の自意識の希薄さに付け込んだ文学中年二人組が捏造した夢の文系少女像に、当時の『ぶ〜け』のイメージが個人的には重なる。渚十吾のやりたい放題の趣味性が祟ったか、元おニャン子の枠を超えるブレイクはなかったが、こういう人がディレクターでいられたのもバブル期のソニーの懐の深さか。

*1:そもそもOS9用のiTunesでは接続自体が不可能なのであった。