ビストロSWAMP

「ロックンロール・ダイナー」改め「ビストロSWAMP」にまたしても勤労動員で参加してきました。場所は前回と同じく下北沢ラ・カーニャ
ミュージシャンの書いたレシピ通りに作った料理を味わいながら、そのミュージシャンの音楽を味わうこのイベント、今回のメニューは「スティーヴ・クロッパーのレシピによる『クリームソースのリングィーネ、グリーン・オニオン風』とマイク・アトリーのレシピによる『ココナツ・グローヴ(ココナツがけブラウニー)』」。料理の腕を振るうのはもちろん大林千茱萸さん。アメリカンな味覚を日本人向けにアレンジしたクリームパスタとブラウニーは大変美味。パスタにトッピングされたココナッツスライス、ブラックペッパー、バジル、ピンクペッパーの使い方が技あり。自分でカルボナーラでも作る時にパクろう。私は盛り付けやら配膳やら食器洗いやらのお手伝いだったのだけれど、煮え立つ大鍋の前でパスタを茹でるシェフの獅子奮迅ぶりに頭の下がる思い。今回もたいして役にも立たずに素敵な音楽と食事の御相伴に与ってしまったのだった。
旨い飯を御馳走になりつつ流れるのは、スティーヴ・クロッパーの属したBOOKER T. & THE MGsゆかりの音楽群。サム&デイヴとの伝説的なパフォーマンスがブルース・ブラザースに受け継がれ、さらには日本の忌野清志郎との共演に繋がっていく流れに、方便ではない「リスペクト」に裏打ちされた音楽の血脈の強さを感じた。憧れのMGsを従えて怯むことなく自分の歌を歌う清志郎の姿も大変誇らしく格好良く。清志郎ソロって全然聴いてないんだけど『メンフィス』は聴かなきゃいけないか。マイク・アトリーという鍵盤奏者は全く知らなくて、長門芳郎さんと川村恭子さんの解説もあまり聞き取れなかったのでした。
そしてこの日のライヴゲストは小宮やすゆう。長門さんの旧友にしてシュガーベイヴの初期メンバーというこの人の名は、それこそファミリーツリーの上でしか知らなかった。長い沈黙を経てつい最近活動を再開したという。歌われるのはティム・ハーディンなど70年代米国SSW系のカヴァー曲。これがとても良かった。若い頃はオリジナルばかり歌っていたけれど、歳を取って他人の歌に責任が持てるようになったと語る小宮さん。数十年かけて自身の内部で熟成させた愛する音楽を、ようやく外に向けて解き放った小宮さんは、ファンタスティックな「生きたジュークボックス」のようだ。美しいガットギターの響きに乗せたハスキーな歌声は、繊細だが傷つきやすくはない、力強い優しさを伝えてくる。唯一歌ったオリジナル曲は、長門さんが作詞し小宮さんが作曲した、今は亡き福澤もろさんの「星のきざはし」だった。
3時間を超える長丁場だったけれど、お客さんは楽しんでくれただろうか。川村さん、大林さん、長門さん、関係者の皆様お疲れさまでした。ごちそうさまでした、楽しかったです。