『仮面ライダー響鬼』十八之巻「挫けぬ疾風」

あらゆるものを酸で溶かし体内に取り込む謎の怪物の正体が、東京地下に巣食う魔化魍オオナマズの胃袋だったというアイデアが秀逸だ。いまだ覚束ないCG巨大モンスターバトルに加えて、アクション演出のノウハウを蓄積した等身大怪人バトルを挿入するための苦心の策かもしれないが、そうした制約から面白い発想は生まれるものかもしれない。それもシリーズの快調を物語る。
今回の主役であるイブキさんの格好良さは文句なし。人気のない下水処理場で遊ぶ子供達を優しく諭すその大人な倫理性、ゲッコーステイトの連中に見せてやりたい(笑)。音撃管が手元にない状況で決然と(しかし穏やかに)「鬼として頑張ってきます」と言い放ち、お洒落な靴を下水に浸しながら戦いへ赴くイブキさん。そんなイブキさんを火打石を打つ仕種で送り出す香須実さん。前回のほのぼのデートとのコントラストといい、荘厳なBGMといい、鳥肌が立つ名場面。危地に絶妙のタイミングで駆け付けた響鬼を制し、自分で止めを刺しに行く威吹鬼響鬼に比べ少し見劣りしていた威吹鬼のヒーロー性を一気に取り戻す前後編だった。そのぶん響鬼の活躍の少なさがそろそろ物足りないのだが(来週は轟鬼編だし)そのうち新展開もあるか。
東京地下の水中に潜む魔化魍を追って、行徳・八丁堀・東雲と街を駆ける鬼たち。特に文字通り地を駆けるあきらの奮闘ぶりに敬礼。携帯電話で連絡を取りながら、地下鉄で移動するあきら。大自然の懐から都市に舞台を移しても、充分に魅力的な作劇・演出ができることを証明してみせた。人手の足りない「たちばな」のヘルプに巻き込まれる明日夢、そのたちばなに戦い終えて帰ってくる鬼たち、さらにもっちーまで来店と、暖かく賑やかな幕切れも実に気持ちがいい。