上石神井ブックオフにて

THE BEST OF JOHN SEBASTIAN('89)
750円。ライノから発売されたベスト盤。"JOHN B SEBASTIAN"('70)から6曲、"THE FOUR OF US"('71)から2曲、"TARZANA KID"('74)から3曲、"WELCOME BACK"('76)から4曲、シングル"GIVE US A BREAK"('72)を収録。冒頭の1stソロ6曲の、思い出を掻き集めたような懐かしく夢見がちな音楽と比べると、その後のカントリー・ロックに傾斜したサウンドは文字通り「アーシー」で、歌にも堅い芯のようなものが出来たように聞こえる。どちらも暖かいメロディと友愛の流れた素敵な音楽であることには変わりがないけれど、"JOHN B SEBASTIAN"収録曲の、過酷な現実に対するオルタナティヴとして生まれたのかもしれないファンタジーは、ちょっと類を見ない。この音楽が同時代のミュージシャンにとって一つの旅の道標となりえたことが想像できる。

MICKEY HART/PLANET DRUM('91)
250円。グレイトフル・デッドのドラマーが、ザキール・フセインアイアート・モレイラフローラ・プリムらと共演したエスニック・ドラム・アルバム。ミッキー・ハートエスニック打楽器の大家で、日本の鼓童と交流があるということを、今調べて初めて知った。オリジナル・ヒッピーが世界の共通言語としての打楽器に関心を寄せるのは、非常に筋の通った生き方かもしれない。ただ、この音楽自体には「米白人がコーディネートしたワールドミュージックのカタログ」といった物わかりの良さがどこか拭えない(ああ、某マガジンめいた言い回しだ)。それよりは白人の民族音楽としてのロックビートのほうが面白いような気もする。

BOB JAMES/ONE('74)
250円。私はボブ・ジェームスイージー・リスニング的な気楽さを持ったフュージョンが意外に嫌いではない。なので、このアルバムのファンクネスを底に据えた硬質なエレクトリック・ジャズには驚いた。根がアレンジャーなのか管弦が出てくるとどうしても大仰になってしまうが、スティーヴ・ガッドds&ゲイリー・キングbのうねるリズム体、リッキー・レズニコフのファンキーでソリッドなギター、さらにボブ・ジェームスのクールなエレピが織り成す対話はスリリングだ。「パッヘルベルのカノン」にペダルスティールとハーモニカを絡めたり、「禿山の一夜」をジャズファンク化したりと、頻繁に顔を出す一捻りしたクラシックのセンスはプログレ好きにもアピールしたりしなかったり。

EDDI READER/SAME('92)
250円。フェアグラウンド・アトラクションの大成功に疲れ切ったエディ・リーダーが、新たな仲間たちに支えられて作り上げた復帰作。生楽器主体の小編成で短期間で作られたアルバム、なのだが、エンジニアのテリー・メドハーストによる深いエコーと立体的な音像を持った音造りによって、フェアグラウンド以上にゴージャスな仕上がりになっている。とりわけトーマス・ドルビーがリミックスした冒頭曲は、4ADやダニエル・ラノワ的な人工美を感じさせるサウンド。原点回帰のはずがフェアグラウンドほど素朴には聞こえない。もっともゴージャスだから悪いというはずもなく、気心知れたバンドの演奏にはさらなる彫琢が施され、エディ・リーダーの美しい歌声は、ジャズやトラッドに根ざしつつも少女じみた甘味を残していて心地良い。フレッド・ニール、ラウドン・ウェインライト三世、スティーヴ・アールなどのカヴァーのさりげなさは、エディがソングライターである以前に歌手なのだということを思い起こさせる。