『仮面ライダー響鬼』十六之巻「轟く鬼」

引退を決意した斬鬼から戦いを引き継いだ、戸田山=轟鬼のデビュー戦が描かれたこの巻。初見では前回のテンションを引き摺って視聴したためか少々物足りなく感じられたが、見返すと味わいがじわじわと染みてくる。
最初の戦いで失敗した戸田山の視点で、ワゴンの後方から窓越しにザンキさんの横顔を捉えるカット。ワゴンの座席に腰掛け休むザンキさんから見上げた、不安を満面に称える戸田山の表情。「俺との2年間……全部忘れろ」と突き放され、途方に暮れながら烈雷をチューニングする戸田山越しに捉えられたザンキさんの全身像。そして、独り戦う弟子の姿を見つめるザンキさんの険しい表情。今回の演出の主題は、このようなザンキさんと戸田山の、視線の交換にあったのではないか。そりゃフラグも立とうってなもんですよ! 私の中の腐女子脳が(ry
もう一つのカップリング(……)ヒビキさんと明日夢のほうは、あっさりと師弟展開を否定。視聴者の予想をあえて裏切るというより、現在の明日夢に鬼を目指す動機があるとは思えないので当然か。案外このままパラレルな成長劇として維持されるのかもしれない。そこをまた裏切って師弟関係に、ということがあっても驚かないが。ヒビキさんと明日夢の間で落ち着きのない、明日夢母の様子がまたリアル。
鬼の忘年会(!)で戸田山がヒビキに腕相撲で勝った、と語るザンキさん。「忘年会があるような組織の在り方」「ヒビキさんの突出した力量」「そのヒビキさんを呼び捨てるザンキさんの存在感」「戸田山の潜在能力の大きさ」など、様々な情報を一言で伝える脚本が実に巧い。ザンキさんの引退と戸田山のデビュー戦を見守る猛士一同の思い、とりわけ戸田山に惚れている日菜佳の不安、戦いの後の安堵などをしっかりと視聴者に伝える演技演出は濃やかだ。ヒビキさんがザンキさんに労いの、そして戸田山には励ましの電話をする件りは、この回の(主役を立てるという意味でも)大きな見所だった。大人の人間関係のリアリティがそこにはある。
試行錯誤の果てに自分の型を見い出し、見事「山嵐」を倒す戸田山。エレキギター音撃は格好良いのか笑うところなのか微妙だが、これもまた『響鬼』ならではの味わいだ。戦い終わっての戸田山捨て身のギャグ、世代交代を実感したヒビキさんの表情、ヒビキさんとの絆の証であるコンパスを陽にかざす明日夢など、幕切れも実に清々しい。
次回、ついにあきらの制服姿が!(ポイントはそこか!)