矢野顕子『ひとつだけ/the very best of 矢野顕子』(96年)

このベスト盤を実は聴いていなかったのだが、近所のレンタル屋で見つけて借りてきた。これだけは聴きたいと思っていた「気球に乗って」のキャラメル・ママ演奏バージョンがやはり白眉だ。リトル・フィート版に比べるとグルーヴの周期が短く感じるのは、林立夫の正確にタイトにリズムを刻むドラムと、細野晴臣の音数の多いベースが小節を細分化していくためだろう。フィーツの豪放とキャラメルの端正、どちらも捨て難い。
ところで、「いいこ いいこ(GOOD GIRL)」を聴いて不意に泣きそうになってしまった。

たまにね
たまにね ほんとに たまにね
おかあさんも ほめられたい
さくらの季節に いちどだけとか
そのくらい たまにで いいんだ
いいこ いいこ いいこ いいこ

私はおかあさんでもおとうさんでもないが、ほめられたい。
ほめられる内実などないが、それでもほめられたい。
たまに日記が おもしろいとか
そのくらい たまにで いいんだ


……馬鹿かねチミは。