ザ・タイガース『廃虚の鳩/光ある世界』(68年)

近所の古書店にて300円。バカジャケでレコードを買うような風流心はあまりないのだが、このシングル盤の原物を前にすればその迫力に屈するしか。ジャケ写がえとせとらレコードのサイトにあったので張っておくが、見ればわかるようにBUFFALO SPRINGFIELD/LAST TIME AROUND('68)のいただきだ。しかもこのジャケ、オリジナルの意匠を模して写真のフレーム部分が本当に木彫りなのだ。カルチャーセンターの通信教育で学んだ主婦の作品のような、えも言われぬ味わい。当時国内盤など出ていない、ほとんど誰も知らない作品のジャケットパロディは、限り無く盗作とのグレーゾーンに近付くが、「判る奴だけ判れ」という遊びにこの労力をかける思い入れが、メンバーにあったのだと思いたい。もっともバッファローとの音楽的な関連性は感じられないが。ただ、コンボスタイルのロックに管弦を導入するアレンジや、それぞれ山上路夫なかにし礼による美文調の歌詞は、日本独自のプログレッシヴ・ロックと言えなくもなかったりなんかしてからに。ムーディー・ブルースを思わせたりもする。
ところでこのえとせとらのサイトはさすがの充実振り。バッファローのジャケと比較もできる[欄外コラム] 「廃虚の鳩」のジャケット・デザインをぜひ一読されたし。