田中圭一『つっこみドン!!』(イースト・プレス)

ブックオフにて105円で購入。テヅカナイザーがインストールされる以前の作品集だが、やっていることは手塚化以前も以降も変わらぬ「破廉恥一本槍」。ただし、田中圭一本来の絵柄である中途半端な劇画調が、コテコテの芸風をこれでもかと強調して非常に泥臭い。その泥臭さがかつての作者の持ち味であり違和感でもあったのだが、後に絵柄を手塚治虫そのものにシフトしたことにより表現が洗練され、逆に下ネタギャグのえげつなさが倍加される効用がもたらされた。本書は現在の芸風と比べるとさすがに垢抜けないが、その隅々まで行き届いた下品さには心の故郷に帰ったような安らぎがある。万人に奨めるものではないが。
しかし、巻末に付された田中圭一の会社員としての行状は凄まじいな。*1これが営業マンのライトスタッフというものか(違うかも)。

名古屋田中の後輩) あと着荷と同時に、それも朝の6時とか7時にですよ、営業マンが2、3人で問屋さんの前で待ち構えてるんですよ。
田中 それで運送屋さんが到着したら、着荷を手伝うフリして、そのスキに全然注文されてない商品をも着荷させて……それを倉庫のスミの、目立たないところに隠しちゃうの(爆笑)。受領印も勝手に押しちゃって。
名古屋 レフェリーが見てない時の悪役レスラーみたいな感じで(笑)。着荷と同時に隠すなんてホント幼稚なんだけどさぁ、通じちゃうのがいけないね、この業界(笑)
田中 これがいわゆる「まぼろし着荷」なんだけど(爆笑)。

*1:当時は玩具メーカー勤務。現在もゲームメーカーの社員と漫画家を兼業している。