梅はもう咲かない

三鷹駅北口のドトールの裏手に梅林があった。3月になって甘酸っぱい梅の香が漂うたびに、春の訪れを感じるより先に、無為の長さを責められる気がしたものだ。
その梅林が突然なくなった。突然、といっても私が立ち寄らなかった数カ月のことだろうが、全ての梅の木が伐り倒され、中心にあったはずの屋敷も取り壊されて、砕石が敷き詰められただけの駐車場に姿を変えていた。おそらく私有地だけに他人には計れない事情もあったのだろうが、それにしても行われたことの野蛮さに呆然とする。
もう二度とこのあたりで梅の匂いを嗅ぐことはないだろう。それで心の平穏が訪れるはずもない。季節のない街に駐車場ばかりが増えていく。