CAMPUR DKI/DANGDUT OR NOT?('92)

古書店にて割引券併用50円で購入。この「チャンプルDKI」の3rdアルバムは、なかなかに際どい作品だ。インドネシアの民族的な歌謡音楽・ダンドゥットの地元アーティストにWAVEとソニーの資本が入り久保田真琴がプロデュース、という在り方はいかにもブームとしての「ワールド・ミュージック」というものを想起させる。エスニック歌謡にエレクトロニクスが導入され、レゲエ、ヒップホップ、ソウル、ラテンなどの要素が折衷された「音楽の自由」を、バブルの余勢とセゾン文化の力場の中で、少なからぬ人々が享受し、そして忘れたはずだ。今やWAVEはなく、ソニーからこんなアルバムが出ることもないが、それでもインドネシアではこうした音楽が(より守旧的になっているのかもしれないが)流れ続けているのだろうし、久保田真琴インドネシアを拠点の一つとして音楽の旅を続けている。何よりここに収められた音楽は、彼の地の料理のような甘酸っぱい歌謡性に、鋭いリズム感覚が香辛料を加えて、その風味をいまだ留めているのだ。それにしても場末のワゴンCDに身を落とした本作との出会いは、六本木や池袋のWAVEで新しい音楽にときめいた当時の自分の姿を思い出させ、多少の苦味を残す。