『鉄人28号』第25話「黒部の危機」

最終回直前のここまでほぼ観続けてきたが、やはり全体に戦後史のパロディめいた印象は変わらない。歴史の闇に隠れた「事実」が一つ一つパズルのピースのように嵌っていく快感は、物語の醍醐味ではある。だが、茫漠とした歴史を把握可能な整合性あるものとして捉えようとする欲望は、大塚英志ふうに言えば「偽史」を求める志向に通じるものがある。今川監督が「これはパロディなんですよ」などという言い訳をおくびにも出さず、シリアスな物語を語り続ける態度は見事だが、同時にある種の胡散臭さも感じずにはいられない。まあそんな突っ込みどころを含めて面白い作品ではあったのだが。例えば『プラネテス』の本気と『鉄人』の本気とを比べれば、針の振り切れ具合の差で後者の方に思い入れしたくなるのだ。敷島博士の存在一つとっても圧巻である(笑)。そんな敷島たんを巡るカップリングでは大塚署長にも敗れてしまう正太郎だが、それが戦中体験を共有できない新世代の宿命なのだろう。