WINGS OVER 円山町

WINGSFAN6 〜Tribute Festival for Paul McCartney & Wings〜
2006年12月17日 渋谷Lantern
出演:宮崎貴士/THE SUE/WINEGS/JETs!/KenY@m`s Farm/Winks

実はあまり趣旨を理解しないまま、八王子のポール・マッカートニーこと宮崎さんがウィングスを中心にポールの曲を歌うというので、いつもの快速電車は止まらない神泉の駅に降り立った。
で、会場に入ってみると何やら皆さん知り合い同士という感じの忘年会っぽいムード。ウィングスのファンサイトが主催した純然たるアマチュアによるライヴで、オフ会の趣もあるらしい。正直これは場違いなところに来てしまったかとも思ったが。
最初は主催者の人によるバンド。かのライヴ盤"Wings Over America"('76)から代表曲を演奏するという直球の選曲。好きでやるんだから当然か。聴き込んだ曲を形になるまで何度も練習するというアマチュアならではの熱意が結実して、どの出演者もなかなかの演奏。しかも客が全員曲を知り尽くしていて、小さな会場のあちこちからカウンターコーラスが聞こえてくる有様(笑)。私が観たのは3組だったけど、生活基盤を築いた上で好きな音楽を演奏するという「大人のロック趣味」の正しい姿がそこにあった。とは思うものの、ウィングスのアルバムは3、4枚しか聴いてない薄いリスナーとしては、それなりに楽しいけどそろそろ次の約束の時間が気になってきた。
焦れはじめた4組目にようやく宮崎さん登場。宮崎さんも仲間内というほどではないらしく、最初にギターで弾き語りを始めたあたりでは、帰り支度をした人が前を横切ったりしていたのだけれど、ピアノの前に座ると様子が一変。自由自在なピアノと余裕のある歌声で、お馴染みの名曲からやや通好み(なのだろう。私はよく知らない)の佳曲まで、譜面も歌詞も見ずにとっかえひっかえ宮崎さんの体から流れ出る。まるで生けるジュークボックスだ。練習を重ねて曲の形を忠実になぞる「アマチュアの本気」に対して、自分自身の音楽に血肉化されたポールをちょいと再生してみせる、いわば「アーティストの余芸」なのだが、その芸はさすがに次元が違う。周囲みな濃ゆいポールファンという状況で、一身にリスペクトを集めていたのは感動的だった。いやいいもの聴かせてもらいました。これで十二分に元は取れましたよ。