WALLY BADAROU/WORDS OF A MOUNTAIN('89)

2割引セール中の吉祥寺RAREにて800円。レヴェル42の鍵盤奏者のソロアルバム。シンクラヴィアと当時のMacintoshを駆使して作り上げた、世界各地の山岳へ捧げた頌歌集は、クラシックの教養と訓練に支えられた一人オーケストラの趣で、ニューエイジというよりは冨田勲などに近いシンセサイザー音楽だ。本作を手に取ったのはレヴェル42のファンだったというわけではなく、細野晴臣が影響されたシンセ奏者として名前を挙げていたからだが、聴いてみるとなるほどと頷く、どころか仰け反ってしまう。ピアノにかけられた深いエコー、選ばれた音色、曲想など、知らない人に細野の未発表作として聴かせても信じるのではないか。ていうかこの人絶対『銀河鉄道の夜』(85年)とかモナドものを聴いてるとしか思えない。コシミハル風の女声まで参加している。実際に両者に交流があったのかは知らないが、細野側の一方的な影響にせよ、感性を共有する部分が多いのは確かだろう。もっともウォーリー・バドルーのほうがずっと西欧的、構築的だが(細野のインスト曲は概してとりとめがない)。細野晴臣の「アンビエントやミニマルではないシンセサイザー音楽」とりわけ『銀河鉄道の夜』が好きなファンなら、頬を緩ませつつ楽しむことができるだろう。そうでなくても「癒し」の臭みがない優れたシンセサイザー音楽としてお勧めできる。