TRAFFIC/WHEN THE EAGLE FLIES('74)
お茶の水ディスクユニオンにて680円くらい(失念)。このラストアルバムはアナログ盤でいうA面が白眉、というより全てといってもいい。すでにギターのデイヴ・メイスンは脱退して久しく、ギター抜きでキーボードとサックス主体の、ロックを逸脱しジャズに接近した編成による演奏がとても新鮮だ。ここでスティーヴ・ウィンウッドはトレードマークのオルガンに手を触れず、代わりにエレクトリック・ピアノとシンセサイザー、そしてメロトロンを駆使している。2曲目"DREAM GERRAD"では、ドラムに復帰したジム・キャパルディとベースのロスコー・ジーが紡ぎ出す16ビートのジャズ・ファンク的なサウンドが、空間を覆うメロトロンによって英国白人ロックの渾沌に飲み込まれていく展開が圧巻だ。3曲目"GRAVEYARD PEOPLE"はラテン風味のリズムの上で跳ねるエレピとシンセが、初期のリターン・トゥ・フォーエヴァーを思わせる。サイケの時代に産声を上げ、ブルース、カントリー、トラッドなど様々な音楽的変遷を経て、最後に辿り着いたサウンドはフュージョンにも似ていなくはないが、そこには単なる洗練を超えた凄みがある。ウィンウッドの鍵盤奏者としての実力が最大限に発揮された作品としても特筆すべきだ。
アルバム後半はバンドの原点である渋い白人R&Bの曲が並び、オルガンが加わった安心感のある音が聴ける。ウィンウッドの伸びやかで艶のある歌も素晴らしく、その後のソロ歌手としての活動に通じる。とはいうもののアルバム前半のスリリングな切れ味がやはり忘れ難い。サックスとフルートのクリス・ウッド、ジム・キャパルディ、ここには参加していないがパーカッションのリーバップもすでに物故し、トラフィックの音楽も今では再現不能なものになった。