パーティーは終わった

【にほんごのふぉーくとろっく ぷれぜんつ vol.2】
2005年10月1日(土) 下北沢mona records
第1部:ライヴ 開場18:00 開演19:00
出演:有山じゅんじ高田漣Early Times Strings Band
第2部:DJ(オールナイト) 開始23:00ごろ
出演:川村恭子/菅原圭(id:vacatonos)/山下スキル/風街まろん

てなわけでvol.1に続き、日本語のフォークとロックの濃ゆい汁をライヴとDJで舐め尽そうという、このイベントも無事終了。まあ無事というかなんつーか。当日の朝までかかって選んだ音源をかつぎ、武蔵野から下北沢まで自転車を走らす。所要時間45分。まあ結構な運動量ではあった。


小さな会場の席も埋まってライヴ開始。最初に登場したアーリー・タイムス・ストリングス・バンドは、つい先日も狭山で見たばかり(MCでも当日の悪天候を話題にしていた)。それぞれに無二の個性を持った歌手であり演奏者であるメンバーたちがぶつかりあい火花を散らす、わけではなく、大雑把な打ち合わせのもと(リハーサルと微妙に内容も違ったような……)阿吽の呼吸と成り行きにまかせた楽しい演奏がこの日も繰り広げられた。ほとんどのメンバーが50歳を超えた歴史あるバンドだけに、長きに渡って歌い続けた楽曲には「この歳になってようやくうまく歌えるようになった(村上律)」と語るだけの深みがあり、失敗も味として納得させてしまうライヴならではの化学反応がある。しかもそのケミストリーは、毎回のライヴで発生するのだ。この日はラストショウのレパートリーでもある「キングコング」も演奏され、3人のメンバーが重なるアーリーとラストショウの個性の違いが確認できた。一言で言えばラストショウはプロの職人気質で、アーリーはプロの本気の戯れか。カントリー風味の演奏にあって一人サイケデリックな匂いを発散させる、渡辺勝の存在感も得難い魅力だった。


次は高田漣のソロパフォーマンス。ハイドパークフェスの細野バンドでは要の位置にいた若き名人が、ほとんど育ての親のようなメンバーと並んで、どんな心意気を見せてくれるか。以前に吉祥寺ディスクユニオンでのソロライヴを見たことがあるが、そのときはバックのリズムボックスがチープな味わいを醸しながらもペダルスティールによる比較的伝統的な演奏を聴かせていた。ところが今回は、ステージの狭さにもよるのだろうが、ペダルスティールではなくエレキギターとスライドバーの組み合わせ。このギターが妙な代物で、スピーカーとリズムボックスを内臓し、ギターシンセMIDIギターか、ヴィブラフォンやメロトロンのようなギターとは思えない音色と多彩なテクニックが相俟って、一人音響テクノともいうべきモンドでストレンジな音楽性が予想外の面白さだった。こういう謀反気がソロアルバムで発揮されればいいのに。ちなみに会場の後ろで育ての親たちは、その奇天烈さに笑い転げていたらしい。ある意味正しい楽しみ方だ。


高田漣はステージを降りず、そのまま有山じゅんじのサポートに回る。私の中で有山の印象は、上田正樹との共演盤『ぼちぼちいこか』(75年)でのそれに止まっており、ほのぼのとしたユーモアは伝わるものの、上田の灰汁の強さに比べると線の細さを感じていた。それが、今回初めて見た有山のライヴによって完全に塗り替えられてしまった。まず声が昔よりもしわがれて味わいを増し声量も豊かになり、半ば即興でもあるのだろう、シュールでキレた笑いを含む歌詞を自在に歌い回すヴォーカルに引き込まれる。だがもっと凄いのはそのアコースティックギターの演奏で、ネックの上を軽やかに指を移動させ、グルーヴを維持しつつ高速で弦を爪弾き叩き指を引っ掛けてはじき、色彩感豊かな音響空間を発生させていた。川村恭子さんは「日本のジョン・フェイヒィ」と形容したがむべなるかな。私はダニエル・ラノワやジョニ・ミッチェルなども連想した。山崎まさよし押尾コータローに傾倒するギター小僧が、このとんでもない演奏を聴いたら腰を抜かすだろう。高田漣も先と同じギターを使用しながら、奇矯さを全開にしたソロ演奏とは一変して、太くファンキーなスライドで有山の圧倒的な演奏と渡り合うのだから大したもの。最後には有山・高田・アーリーが狭いステージにひしめき合うように歌い演奏。間近で聴く松田幸一のハーモニカが実にエモーショナルで素晴らしい。年季の入ったミュージシャンと、彼らに育てられた期待のホープの共演は、伝統に根差した音楽の普遍性と変わらぬ新鮮さを伝える楽しいものだった。


この後DJとなるのだが、その前に店側がブッキングした三村京子のライヴが入る。メインアクトが終了後ほとんどの客が帰ってしまい、かなり寂しい状況になってしまった。三村京子は本来は内省的な弾き語り歌手なのだと思うが、なんと即興的なドラム演奏との共演というユニークな編成で、徒にアバンギャルドな空気を醸し出していた。それをサイケで面白いということも可能だが、やはり普通にソロで歌ったほうがよいのではなかろうか。


かなり寂しい状況であったのはDJ陣にとっても同様で、数人の客を相手にプレイする様はほとんどホームパーティ状態であった。今回は詳細がなかなか決定せず告知が遅れたのも一因だが、こちらのモチベーションの薄さや、あるいは照れからくる微妙にやる気なさげなポーズが見すかされたのではないかとも思う。自業自得か。もっともそれで楽しくなかったかといえばそんなこともなく。なんちゃってDJとはいえ、他者に自分の音楽地図の一部を開陳する作業はそれだけで楽しい。ていうか、いっそホームパーティに機材を用意して、多くて20人くらいの友人知人を前にプレイするだけでもいいのではないかとさえ思った。オフ会ですかそれは。もうこれからは恥も外聞もなく宣伝することにするよ! みんな、オラに勇気を分けてくれ! 
まあ最後には打ち上げからアーリーのメンバーも戻ってきて、まったりと朝まで山下・菅原・川村各氏の持ち味の生きたレコードまつりを楽しんだのだった。
私のセットリストは以下の通り。


1周目:GIRL'S SIDE
ふちがみとふなと「ごあいさつ」
荒井由実「生まれた街で」
矢野顕子「待ちくたびれて」
さかな「Little Swallow(Jim O'rouke Mix )」
田中亜矢「サヨナラの砂」
空気公団「朝のはずみ」
金延幸子「空はふきげん」
渡辺満里奈「あなたから遠くへ」
五輪真弓「十九歳のとき」
ラジ「ジャスト・イン・ザ・レイン」


2周目:BOY'S SIDE
高田渡「ごあいさつ」
マグースイム「糸の鎖」
風コーラス団「ロココの風車」
古井戸「らびん・すぷんふる」
斉藤哲夫「MR.幻某氏」
青山陽一「キキミミタテル」
宮崎貴士「アステア」
赤い鳥「紙風船
ラリーパパ&カーネギーママ「冬の日の情景」
ココナツバンク「無頼横町」
小坂忠とフォージョーハーフ「どろんこまつり」
コモンビル「悲しいだけ」
はっぴいえんど「あやかしのどうぶつえん」(LIVE)


来て下さったお客さまがた、ありがとうございました。この次はモア・ベターよ! だからみんな来てね。次っていつJARO