『ドリルキング・アンソロジー』(94年)

レンタル流れ380円。豊富なアイデアと表現力を「ひとを小馬鹿にする」ためだけに蕩尽し、格好良いテクノ・サウンドを世にもくだらない歌詞で台なしにする、そんな電気グルーヴの前衛的側面のみで構成された「実験音楽」アンソロジー。電気や「バカはサイレンで泣く」「バカドリル」界隈がいかに日本の男子文化のごく一部に、とりわけネット上のおもしろテキスト表現に深刻な影響を与えたかに関する精神史的資料として聴ける。「○○くんキモーい」とクラスの女子に指差され笑われる中学生男子が「この面白さが判るのは俺だけ」と自らを聖別するための心の杖。伊集院光のラジオをいまだに聴いているような30代男子にとってのアンセムでもあろう。私の心の四畳半に住まう中学生も「ドリルキング社歌」が好きだと言っている。
大人になった今も、ピンクサロンに行ったことはない。
キャバクラにも行ったことがない。別に行きたいとも思わない。
が、連れていってくれるならやぶさかではない。
モテたくはないモテもしない。だけど女は嫌いじゃない。
メガネ男子だがレンズの脂は拭かない。
野犬の交尾を邪魔したい。
モテたい。